夏月一会

医師からその宣告を受けたのは、二人が結婚して、一年が過ぎた頃だった。



「無精子症……?」


「はい。検査の結果、そのように診断されました」



結婚してから、二人の間にはなかなか子供ができなかった。
流石に異常だと思った慶一と遥が病院に訪れたところ、慶一の方に下された結果だった。


「……全く、可能性がないわけではありません。…しかしいずれにしろすぐに上手くいくかは、何とも言えません。それよりむしろ、奥様の身体のことを考えて……今はともかく、あまり期間が長くなってしまうと……」



二人の間の子供を作ることは、絶望的……はっきり言われなくとも、それだけは明確だった。




「すまない…私のせいで……」

病院の帰りの車の中、慶一は何度も遥に対して詫びていた。
遥が、どんなに慶一との子供を望んでいたのかは、慶一が一番よく知っていたのだ。

「そんな……あなたのせいじゃありません。それに、お医者様も可能性がないわけではないと仰っていたでしょう?…焦らずにいれば、きっといつか恵まれます。絶対に……」

遥は、慶一が膝の上で拳を固めている上に、そっと手を乗せた。

「遥……」

遥は、決して望みを捨ててはいなかった。
どんなに可能性が低くても、信じていた。


いつか、二人の子供を抱き締める日がくることを……

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