婚カチュ。
3 ◇ ◇ ◇
待ち合わせの居酒屋に到着すると、希和子(きわこ)が奥のテーブルから手を振った。混み合った店内を縫うようにして彼女のもとにたどり着く。
「ごめん、お待たせ」
「おつかれさまー。どうだった結婚相談所」
店員にビールを注文し希和子は好奇心をあらわに訊いてくる。わたしはため息をついた。
「スパルタなアドバイザーにこてんぱんにやられたよ」
「ああ、例のイケメンアドバイザー」
笑いながら運ばれてきた突き出しに箸を伸ばす。
「シイちゃんは仕事から離れるとネジが外れるからなぁ。いたぶり甲斐があるんじゃない?」
「ひどい」
友人であり職場の同期でもある希和子はほんわかとした外見にもかかわらず明け透けにものを言う。わたしは運ばれてきたビールをあおった。
「ごめんごめん、でも完璧な女より、どこかぬけてるほうが男も結婚したがるんじゃないのかな」
「……わたしって、ぬけてるの?」
希和子はビールのグラスに口をつけた。