婚カチュ。
 

「東京育ちの女性弁護士が、北海道の紋別に移住するドキュメンタリーでした。その方は地域の人の役に立ちたいと、弁護士が不足していた場所にわざわざ開業しに行ったんです。寒さの厳しい慣れない土地で奮闘する姿が放映されていました」
 

戸田さんの目が、まっすぐわたしを射抜く。


「あなたも、もしかするとそうなんじゃないですか?」
 

男性は元来、大きなことを言う種族だ。自分を大きく見せて、敵を怯ませたり、女性を惹きつけたりしようとする。
それなのに戸田さんは。
 
彼はスプーンを置いたまま黙ってわたしを見つめていた。なにか言おうとして、言葉に迷っている様子だ。
 

やっぱり戸田さんは希和子に似ている。
自らをよく分かっていて笑顔で相手を油断させ、ときに弱いふりをするくせに、その芯は異常なまでに強い。

小さな波にはびくともしない、頑丈な根を大地に下ろした大樹だ。
 

不意に彼が右手で両目を覆った。首を傾げるわたしの前で、小刻みに肩を震わせる。
 
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