婚カチュ。
4 ◇ ◇ ◇
金曜の夜はどこもかしこも人が多い。
混み合った店内はテーブル席がすべて埋まり、空いているのはカウンターだけだった。そこからは正面にガラスで仕切られた厨房を眺めることができる。
煙が立ちのぼる焼き台に立ち、店員が真剣な表情でいくつもの串を返していた。頭に黒いバンダナを巻いた若い男性店員がふとこちらを見る。
「べ、弁護士に告られたっ?」
わたしは慌てて希和子の口を塞いだ。
「声、大きい」
わたしの手を強引にはがし、希和子は血が沸いたように黒目を爛々とさせる。
「すごいじゃんシイちゃん! 弁護士って! いくら結婚相談所でもそんな人めったに見つかんないんじゃない? すごいよ! あ、待って、でももしかしてすっごいブサメンだったりするの?」
希和子の必死の様子にわたしは苦笑した。
「ブサくないよ全然。むしろ見た目はそこそこいいと思う」
広瀬さんのうつくしさには及ばないけれど、と心の中で付け足して、わたしはビールのグラスを傾けた。琥珀色の液体がのどの奥をぴりぴりと刺激する。