婚カチュ。
翡翠色のイチョウの実はえぐみが少なく香りがいい。黙って咀嚼しているわたしに、希和子はマイクを向けるかのようにモモ串を差し出した。
「で、その実業家くんに好きだって言ったの?」
噛み砕いた銀杏のかけらが喉にひっかかる。噎せこむわたしの背中を希和子が「大丈夫?」と叩いてくれる。
「い、言ってない」
ビールで流し込むわたしを見て、彼女は眉を曇らせた。
「えーなんでよぉ」
「だって、その人桜田さんと」
そのときだった。
「あらー希和ちゃん、ひさしぶりじゃない!」
背後から聞き覚えのある声が響く。
「あら紫衣ちゃんじゃないの! やだぁ、奇遇ね」
わたしの肩に白い手が置かれた。美しいネイルが施された華奢な指。
希和子の表情がぱっと明るくなった。