婚カチュ。
「……しんどい」
思わずつぶやくと、希和子が「えっ?」と振り向いた。
「ううん、なんでもない」
首を振り、何食わぬ顔で話に戻る。
わたしは根っから恋愛体質ではないのだと思った。恋心なんて疲れるだけだ。
時間が経つにつれ希和子はくだを巻き、向こうの席でも桜田さんが見るからに赤い顔をしていた。
「ああんもう時間だぁ、あたし帰んなきゃ」
希和子が乗る路線は終電の時間が早い。
「あ、じゃあわたしも」
カウンターで会計を済ませたあと、桜田さんたちに挨拶をするために立ち寄った。
「桜田さんあたしたち帰りますねぇ、今度は一緒に飲みましょう」
明るく言う希和子に、女社長は赤い顔で無邪気に微笑み返した。
「ええ、気をつけてね」
「おつかれさまです」
出入り口に向かう希和子に続いて歩き出そうとしたとき、がっちりと腕をつかまれた。
桜田さんが細長い両手でわたしをホールドしている。