婚カチュ。


「大切、なんですね。桜田さんのこと」
 

お金を持っている大人の女性が、若い男の子を囲っている。

そういう状況なんだと、わたしは心のどこかで決め付けていた。
広瀬さんの事業についても桜田さんが金銭面でサポートしているのかもしれない。
だから広瀬さんは彼女に頭が上がらない。
 
そう思いたかった。


広瀬さんはわたしの目をまっすぐに見つめ、そして桜田さんに視線を移した。

彼の頬のほくろは相変わらずセクシーで、薄い皮膚に覆われたきれいな横顔にはまるで隙がない。

締まっていた口元が柔らかな弧を描く。


「そうですね……大切です」
 

心臓は、何度破かれても痛むものなのだと思った。
裂けるような痛みには慣れることができない。

いたたまれなくなり、わたしは運ばれてきたウーロン茶に口をつけた。ひどく苦い。

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