婚カチュ。



驚いて振り返ると、傍らに松坂翔太(まつざかしょうた)が立っていた。


「相変わらずですね先輩」
 

まん丸の目で楽しげにわたしを見下ろしている。


「……なんであんたがここにいるのよ」
 

すげなく問うと、


「営業マンが営業推進部にいたって別に変じゃないでしょ」
 

わたしに有名チェーンのカフェカップを差し出す。


「先輩に差し入れです。来る途中に通りかかったら抹茶の新商品が出てたので。好きですよね?」 

「……ありがとう」
 

素直に受け取ると彼は長い人差し指でわたしの頬を突いた。


「ほらそこ、笑顔になるとこじゃないんですか」
 

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