婚カチュ。
思わず嘆息した。
嫉妬したり、傷ついたり。
わたしはいったい何に胸を痛めていたのだろう。
それでも、なぜか悪い気はしなかった。
いつのまにかどこかに落としてしまった大切な何かを、偶然拾い上げたような、思いがけない幸せを手に入れたような気分だった。
ふと、広瀬さんがわたしを見つめていることに気付く。
「なに、か?」
「……紫衣さんに、言っておかなきゃいけないことがある」
低いつぶやきに、胸が騒いだ。
「な、なんですか」
これ以上、驚きの展開はいらない。
そう思っていると、彼は意地悪そうに微笑んだ。
「――俺は結構、嫉妬深いよ」