ある日のできごと

予備校から駅への「駅裏」は、普段から歩き慣れている。
ファーストフード店やパチンコ屋、居酒屋やホビーショップなど、多種多様なお店が軒を連ねていて、その客層はかなり危ない。

駅表と違って人通りの少ない道を歩いて行くと、やがてパトカーが目の前を通り過ぎて行った。
それを見送ると、また1台、また1台…と、市外の局名が書かれたパトカーが次々に走り去って行った。

無線を使って話している警官達に無言で誘導されながら駅へと向かう途中、何度か足下に血痕を見付けた。

ビニールシートの影には倒れている人、うめいている人、事情徴収を受けている人…。

近くに建てられた通知板には、通り魔というおどろおどろしい文字が書かれていた。

「○月○日、午後5時20分、この通りで通り魔がありました。
何か知っている方は、お近くの交番までご連絡下さい。」

その看板を何となく読んで、私は構内へと入った。

改札を抜けて電車に乗り込むまで、彼方此方で警官が立っていて、慌ただしく無線に向かって話しかけていた。

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