いとしいこどもたちに祝福を【後編】
「捨てた覚えはないよ、如月。俺は死人の才臥 充として、此処に来たんだ」

「…っ」

「…死んだ人に意思はない、黙って君の意向に従うさ」

如月は口惜しげに男性の胸元から手を突き放すと、ふいと背を向けた。

「その言葉通りの働き、期待しているよ…才臥」

「ああ」

男性も如月から目を逸らすように俯く。

そうして、遠ざかる如月の足音を聞きながら胸元に忍ばせた写真の辺りに手を添えた。

「仄…はる……」

目を伏せてその手を握り締めると、彼――充はゆっくりと顔を上げて歩き出した。


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