いとしいこどもたちに祝福を【後編】
「…もう、一人でどうにかしようとか、そういうことはしないよ。でも俺は架々見が月虹を使って、父さんの大切な国や母さんを奪おうとしてるのも止めたいんだ」

架々見を、止める――

「本当は怖くて堪らない…だけど俺には父さんや兄さん、それから悠梨さんもついてるから」

「陸」

すると悠梨がふと陸の傍まで歩み寄って、その頭をわしわしと撫で始めた。

「わっ…悠梨さん?」

「架々見の奴とは俺も色々あってな。ちびだったあのお前がそんな風に言ってくれるとは、ちょっと感慨深いぜ」

「色々、って…」

そういえば悠梨と架々見は面識があるようだったが、何か因縁があるのだろうか。

「ああ、俺と愛梨の両親…つまり陸の祖父母は二十五年前、架々見に殺されたんだ。奴が愛梨に目を付けたのも、そのときだよ」

二十五年前――以前、夕夏から聞いた人攫いの事件が横行したという時期にちょうど一致する。

やはり、架々見が加担していたのは噂ではなかったようだ。

「そう…だったんですか……」

「まあ今回、思いっ切り蹴り飛ばしてやったから多少は気が紛れたけどな。どうせすぐに治すだろうが、骨の何本かくらいいったろ」

悠梨は全く抑揚のない声色で淡々と呟いた。

表情からもその心境を読み取ることは困難であり、何故彼はこんなにも無感情なのかと少し気に掛かった。

賢夜も余り感情を表に出さないほうであるが、悠梨はそれ以上だ。

「それはそうと陸、愛梨にも早く顔を見せてやれよ。お前の帰りを一番待ってるのはあいつなんだからな」
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