極上の他人
それにも関わらず、輝さんが私を抱きしめてくれる腕の力が緩むことはなく、ほんの少しでも私がもがけば同じだけの力で私の体を抱き返して。
「泣いてもいいから、消えてしまいたいなんて、言うな。せっかくここまで自分の力で生きてきたんだ。もっともっと幸せになれ」
「……そんなの、無理。どうやって幸せになっていいのかわからない」
輝さんから優しく落とされる言葉にも、前向きな気持ちにはなれない。
せっかくここまで生きてきた、と言われても、両親に捨てられた私を引き取ってくれた人たちによって生かされただけで、これまで私が自分から積極的に生きてきたという実感はまるでない。
じいちゃん、ばあちゃん、そして誠吾兄ちゃんが私を引き取ってくれなければきっと。
私は生きる事を諦めて、今こうして生きていたかどうかもわからない。
けれど、じいちゃん、ばあちゃんが相次いで亡くなって、そして誠吾兄ちゃんもアメリカに行った今、私は言葉通り独りぼっちになってしまった。
忙しく仕事をしている間は孤独を忘れられるけれど、こうして自分の感情と正面から向き合うと、すぐに気持ちは崩れていく。
普段は隠している、弱すぎる自分が顔を出して暴れる。