極上の他人
「子供が自分の親から必ず愛情を注いでもらえるとは限らない。子供が求める幸せを、確実に親が与えてくれる保証もない。
史郁は親に恵まれなかったんだ。運が悪かったと諦めて、親に期待することも嘆くこともやめて、自分の力で幸せになれ」
「だから、どうやって……」
輝さんの言葉一つ一つが重く感じられて、簡単には受け流せない。
自分の力で幸せになれ、なんて。
考えたこともないから、どうすればいいのかわからない。
輝さんの胸に押し付けられたままの私には、輝さんの鼓動が不規則に届いてくる。
その鼓動が心なしか速いと思うのは気のせいじゃないはずだ。
私の背中に感じる輝さんの手も、不規則に這いながら落ち着かない。
もしかしたら、戸惑っているのは私だけじゃなくて輝さんも同じなのかもしれない。
強気な口調で私を諭している輝さんだって、必死なのかもしれない。
そっと頭を動かして視線を輝さんに向けると、目の前には心配そうに、そしてどこか愛しげに私を見つめている輝さんがいた。
輝さんは、私の頬にかかる髪を梳いたあと、これまで以上に意志の強い瞳で呟いた。