極上の他人


「自分の人生を楽しめるように、強くなれ。毎日を真面目に一生懸命に過ごして、笑っていられれば、それが幸せだ。
他人に自慢できるものが何もなくてもいい、史郁がその日その日を穏やかに過ごせるなら、それが幸せだ。
そして、それはたとえ両親がいなくても、人は強く生きていけるということだ。
両親に愛されていなくても、いつか史郁が誰かを愛して家族をつくればいいだろ?
自分の力で幸せになれ」

「家族……」

「そう。史郁が自分で家族を作ればいい。誠吾先輩と弓香先輩が結婚して家族になったように、史郁だって愛する人と結婚して家族になればいいんだ」

「結婚……できるのかな、私……」

輝さんの言葉は私の体の奥深い所に染み入る。

愛する人と家族になればいい。

両親から与えてもらえなかった愛情を、結婚して私が誰かに注げばいいってこと?

自分で幸せを作っていく……自分の力で。

これまでも、誠吾兄ちゃんから言われたことがあるその言葉。

親の愛情に縁がなかった私は、強くなって自分の家族を自分で作ればいいし幸せになればいいと何度か言われたことがある。

そのためにはまず勉強をして、将来の夢を見つけた時にそれを叶えるための力をつけておけと言われた。

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