極上の他人
だけど、本当に幸せになるためには、まだ足りないものがあることも知っている。
……そんなことを思いながら、私は徐々に気持ちを落ち着けた。
輝さんは何も言わずに私をその胸に収めたまま、私の頭に唇を落とし、優しく背中を撫でてくれた。
私は輝さんの背中に自然と手を回す。
温かい、と感じる体温。
私が自分の力で幸せになるために必要なものは何であるかを、私の体は無意識のうちに理解したようで、更に私と輝さんとの距離を縮めようと、身を寄せて小さくため息をついた。
輝さんのことが好きだと気付いて間もない私に、未来を見据えるように促した輝さん。
けれど、輝さんが私に与えてくれるその優しさは、結婚という幸せを私と分け合いたいと思うほどのものではないんだろう。