極上の他人
今こうして体温を分け合っている輝さんと私が結婚なんて、無理……なんだろうな。
輝さんが好きだと、素直に認めたばかりなのに、その途端返ってきたのは。
私が誰かと結婚して、幸せになることを願っているだろうとしか思えない反応。
私が輝さんに好きだと言ったとしても、きっと輝さんには迷惑なだけだろう。
私は小さな頃から慣れている、諦めるという感情を呼び起こそうと、ぎゅっと目を閉じる。
輝さんに、何も求めてはいけない。
同情以上の感情を、欲してはいけない。
何度もそう言い聞かせて、唇をかみしめながら、小さく息を吐いた。
それでも尚、輝さんを好きだという気持ちを完全に切り離すなんてできない。
それどころか、彼の愛情を求めてしまう心には逆らえなくて。
「ごめんなさい。もうしばらくだけこうしていて。輝さんが私を何とも思っていないのは分かってるし、もう輝さんを困らせないから」
ぎゅっと目を閉じながら呟いた。