極上の他人


私の額には、輝さんの額がこつんと寄せられ、そして、ベッドに押し付けられている体は輝さんの体重によって固定されている。

人の体重をダイレクトに感じることが、こんなに自分を穏やかにしてくれるなんて、想像もしていなかった。

でもそれは他の誰でもない、輝さんの重みだからに違いない。

好きな人にその人肌のぬくもりと重みを教えられて、嬉しくない訳がないけれど、今の状態と、輝さんの言葉の意味がよくわからない。

「輝さん、えっと、私は……」

どうしてこんな事になってるんだろう。

私、えっと、突然押し倒されて、ふみか、って呼ばれてる。

それに、店に立つ事なんて滅多になかったって言われても、混乱するだけ。

不安げに見上げる私に輝さんはくすりと笑うと、

「毎日、史郁がいつ店に来てもいいようにうまい料理を作っている俺の気持ちをわかってるのか?」

「え?」

「一人で起きて、一人で会社に行って、一人の家に帰る。そんな史郁が気がかりで心配で、せめて栄養のある夕食を食べさせてやろうと思う俺の気持ちに気付いてないだろう?」

「は、はい……ちっとも」

「くっ。やっぱりそうか。誠吾先輩が心配していたとおり、鈍感だな。……まあ、そこもかわいいけど」

今日、輝さんの口から何度も出た『誠吾先輩』という言葉に、ぴくりと反応する。

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