極上の他人
『史郁は、どちらかというとボリュームのないあっさりとした料理ばかり食べるから、俺は肉をメインにしたメニューを用意して待ってるから』
「待ってるって言われても、私、これからますます忙しくなるだろうし、行けない……」
輝さんの言葉に驚き、慌ててそう答えたけれど、輝さんは特に気にすることもなく、小さく笑い声をあげた。
『どんなに忙しくても、夕食は食べなきゃだめだ。俺が史郁の会社まで迎えに行くし。
うちの店で夕食食べたら家まで送り届けるオプション付き。どう?魅力的だろう?』
「え、ええっ?迎えって、それって」
『ああ、仕事終わりに電話くれたら迎えに行くから。店で夕飯食べて、家まで送ってあげるよ』
送ってあげるって言われても、どうしてそこまでしてもらえるのか、わからない。
そこまで私の面倒を見なければならない理由なんてないのに。
第一、輝さんがお店に顔を出すことは稀だって、この間自分で言っていたのに。
そういえば、輝さんは私のためにお店に出て、私のために食事の用意をしてくれているとも言ってくれていた……甘い瞳を向けながら。
その意味がわかるかと聞かれたあと、考えれば考えるほど、自分に都合良く解釈してしまいそうで、そんな自分に必死でブレーキをかけた。
私のこと、気に入ってくれているのかな。
私のこと、大切に思ってくれているのかな。
私のこと……好きなのかな。