極上の他人
あっと言う間の出来事に、私は身動きもできず、閉じられたドアを見つめていた。
え……?どういうこと?
女性と二人で消えた輝さん。
女性の顔は見えなかったけれど、それは、輝さんが私には見せないようにわざと隠したように感じた。
「もしかして……」
はっと浮かんだ思いに、低い声がこぼれた。
私は千早くんの方へ向き直ると、小さく息を吐き、気持ちを整えて視線を合わせた。
「ねえ千早くん?もしかしたら、あの女性って……」
「あ、俺からは何も言えないから。輝さんのプライベートは一切黙秘。聞きたい事があれば直接本人に聞いた方がいい」
「そんな、聞けないよ」
「俺は、何も言えない」
そわそわしながら困ったように答える千早くんの顔からは、今輝さんと外に出て行った女性が誰なのかを知っているとわかる焦りのようなものが見えた。