極上の他人
「会えちゃった……」
楽しげに話しながら歩く様子からは、この前私に向けていた切羽詰ったものは全く感じられない。
別人にも思えたけれど、確かに真奈香ちゃんだ。
正門を出て、駅へ向かって歩いている真奈香ちゃんに声をかけようか悩む。
大通りを挟んでいるせいで、大声を上げなければ、きっと気づいてもらえないけれど、それはちょっと恥ずかしい。
このまま歩いていけば駅で会えるだろうし、そこで声をかけてもいいかな。
どうしようかな、と悩んでいると、歩道を歩く真奈香ちゃんの側に、一台の車が横付けされた。
真奈香ちゃんに用があるのか、運転席から一人の男性がおりて声をかけている。
「あれ?あの皮ジャンって……?」
どこか見覚えのある男性の後ろ姿に首を傾げる。
そして、不安になる。
もしかしたら……。