極上の他人
乗る機会が多い私の乗り心地がいいようにと、助手席のヘッドレストには私が気に入っているキャラクターのヘッドカバーをつけてくれた。
そのオレンジのカバーは、離れた場所から見ても目立っている。
「……輝さんの車だ」
すると、真奈香ちゃんに声をかけている男性の横顔がちらりと見えた。
「やっぱり……」
硬い表情で真奈香ちゃんと向き合っているその男性は、輝さんだ。
何度か見たことがある黒い革ジャンを着ている。
どう見ても初対面だとは思えない二人の様子を、私は驚きながらも自然に受け入れていた。
真奈香ちゃんの連絡先が書かれている紙を見た時、不自然なまでに表情を崩さなかった輝さん。
どんな繋がりが二人にあるのかと不思議に思えるけれど、こうして二人が会っているのを目のあたりにすると、それに納得している自分に気付く。
それほど、あの時の輝さんはいつもの輝さんではなかった。