極上の他人
亜実さんが病院に通っていることなんて知らなかったし、亜実さんもそんなことを口にしたことがない。
それに、どう見ても元気だし。
今日もワインを飲もうって張り切っているし、病気なんて遠いもののように見えるんだけどな。
「あ、でも……」
ふと、思い出した。
以前、亜実さんと話していて、不意に悲しげな顔をしていたことがあった。
私が亜実さんの人生を羨ましがって、いいなあいいなあ、を連発していた時だ。
あの時は、すぐにいつもの明るい亜実さんに戻ったから見間違いかと思って忘れていたけれど。
あの時の様子が見間違いではなくて、亜実さん自身の病気のことで悩んでいたんだとしたら。
そう思った私は思わず立ち上がり、ばたばたとキッチンに行った。
「あ、亜実さん、これ、どこか悪いんですか?」
上ずった声を隠せないままで亜実さんの背後から近づくと。
「な、何?」
オーブンから何かを取り出していた亜実さんが、慌てて振り返った。
「ちょっと待って。とりあえずこれを置きたい」
よいしょっと、テーブルの上の鍋敷きに大きめのお鍋をおろした亜実さんは、さて、とでもいうように私を見た。
というよりも、私が手にしている薬袋を見た。