極上の他人
「まず言っておくけど、生きる死ぬっていう病気じゃないから落ち着いて」
苦笑した亜実さんは、私の手から薬袋を手に取った。
「まあ、ふみちゃんから見れば完璧な私にも、どうにもならないことがあるってことなのよ」
諦めたような声。
そして、それを笑い飛ばそうとする、から笑い。
どこか痛みが含まれているように聞こえてくる。
きっと、私には知られたくなかったことなんだろうと気づいて、戸惑った。
「亜実さん……ごめんなさい。聞かれたくなかった、ですね」
「ふふっ。まあ、いいのよ。ふみちゃんだって同じ女として、私と同じ思いを味わう可能性もあるから。でも、その前にこれを持って行ってくれる?」
亜実さんが指さしたのは、オーブンから取り出されたお鍋。
「我が家で評判のパスタなの。クリームソースにあえてオーブンで火を通すのよ。気に入ったら簡単だから教えてあげるわね。……輝くんに食べさせてあげたらどうかな?なんてね」
「な、輝さんって……そんな」
「ははっ。照れない照れない。輝くん、ふみちゃんにぞっこんなんでしょ?ぞっこんなんて今は使わないか。じゃ、メロメロ?これも死語?」
からかう亜実さんから鍋つかみを受け取りながら、私の頬は一気に熱を持ち、目の前のお鍋よりも熱くなった気がした。