極上の他人
亜実さん自慢のパスタは、ホウレンソウとチーズがバランス良くホワイトソースに馴染んだ抜群のおいしさで、レシピをもらう約束をした。
料理が苦手な私に作れるのかどうかは謎だし、輝さんに食べてもらう機会があるのかどうかもわからないけれど。
その後おいしいワインがほどよく酔いを誘い気持ちが軽くなった頃、亜実さんはようやく薬の話を始めた。
リビングのラグに亜実さんと向かい合って腰を下ろす。
私よりもお酒が強い亜実さんは、顔色も変わらず口調も普段通り軽やかだ。
「あのお薬はね。ホルモンのバランスを改善するお薬なの。私、あるホルモンの値が高くてね、排卵しづらいのよ。だから、それを改善するためのお薬」
「ホルモン……排卵?」
「そう。女性は排卵して、そして妊娠するでしょ?私は排卵がなかなか起こらないから妊娠しづらいのよね。だから、それを治療するためのお薬」
亜実さんの口からさらっと出た言葉は、私が全く予想していなかったもので、私はワイングラスを目の前のテーブルに置いた。
「妊娠しづらいって……でも、葉乃ちゃんがいるじゃないですか」
亜実さんは、既に葉乃ちゃんという女の子を授かっていて、お母さんとして幸せに過ごしているのに、妊娠しづらいって言われても、ぴんとこない。
それに、結婚してすぐに妊娠したと聞いている。