極上の他人
そんな亜実さんがお薬を飲んでまで治療をしなければいけないほど、病状は重いのだろうか。
「葉乃は奇跡の子なの。本来なら妊娠しにくい体質なのに、色々な偶然と幸運が重なって、タイミングよく生まれてくれた奇跡の子」
私の不安な気持ちを読み取ったのか、亜実さんはそう言って小さく笑った。
けれど、その言葉にも硬さが感じられて、普段とは違う亜実さんが目の前にいる。
「結婚するまで、私が妊娠しづらい体質だって知らなかったの。
というよりも、結婚してすぐに葉乃を授かって無事に出産できて、二人目はいつにしようか、なんて旦那と話していたくらいだし」
「結婚するまでって、えっと、それまでは……」
「それまでは、特にホルモンの値を検査したりしたことなかったのよね。
基礎体温をつけていればすぐにわかるんだけど、若い頃ってそんなこともしてなくて、いざ二人目をって思ってもなかなか妊娠しなくてようやく検査したの。
で、葉乃を授かったのは奇跡だって言われたの」
亜実さんは、小さくなる自分の声に気付いたのか、慌てて笑顔を作った。
その笑顔も、いつもとは違う寂しげなもの。
「私は、たまたま葉乃を授かったから、自分の体の状態を知るのが遅れたのよね。
あ、葉乃が生まれてくれて良かったって、奇跡が起きてくれて良かったって、心から思ってるわよ。でもね、その結果、いわゆる『二人目不妊』の治療をすることになったの」