極上の他人
「二人目不妊……。それ……初めて聞きました。それに、ホルモンのことも、私何も知らないです」
「だよね。結婚してないふみちゃんには縁遠い言葉だよね。
だけど、誰にでもその可能性があるから、機会があれば検査してもいいと思うわよ。それに、二人目不妊なんて、あまり認知されないっていうか、受け入れてもらえないから」
大きくため息を吐き、ワインをグラスに注ぐ亜実さん。
声も表情もそれほど落ち込んでいる様子はないけれど、ほんの少し、グラスを持つ指先が震えているような気がする。
家事の邪魔になるからといって、短く揃えられた爪。
マニキュアも塗られていないのは、葉乃ちゃんを寝かせた後でその時間を確保することすら難しいからだと苦笑していたことを思い出す。
仕事から帰ったあと、家事と育児に奮闘している亜実さんの忙しさがよくわかる。
「婦人科にね、葉乃を連れて行くことも多いのよね。仕事が休みの土曜日の診察の予約がなかなか取れない病院だから、誰にも葉乃を預ける事が出来ない時でも予約がとれる時に行かなきゃ診てもらえないの」
亜実さんは、姿勢を正すように私に向き直り、淡々とした口調で話を続ける。
その場の雰囲気に流されたのか、私もすっと背筋を伸ばして耳を傾けた。