極上の他人
「妊娠するための治療を続ける女性が待合室にいる中では、葉乃を連れている私は異質なの。子供が欲しくてたまらない女性からすれば、『一人でも子どもを授かっているならそれでいいのに』っていう視線を向けられるし、私が葉乃を見せびらかしているように思われて泣かれたこともある」
「……なんとなく、それはわかる気がします」
「うん……。私も、子供が欲しくて治療を頑張っている女性に、小さな子供が走り回る姿を見せるなんてできればしたくないんだけどね。仕方がない時も多くて。
……仕事の段取りはつけられても、診察の予約はなかなか思うようにはいかないの」
亜実さんは、気持ちを整えるかのように小さく息を吐いた。
そして、テレビ台の脇に置かれている葉乃ちゃんの写真を見て笑顔を作った。
「旦那が休みなら預けられるんだけど、営業部だから土曜日に仕事が入ることも多くてね、そんな時には葉乃と一緒に病院に行ってるの。こういう時、実家が近ければって思うわ」
「葉乃ちゃん、幼稚園は?」
「基本的に幼稚園は土曜日がお休みなの。月に一回だけ登園日があるんだけど、それでも午前中には帰ってくるから逆にせわしなくて」
「そうなんですね……」
「葉乃が小学校にあがる前に二人目をって思ってたんだけど、なかなか恵まれなくて諦めてる部分もあるんだけど、治療をやめる区切りをつけられない」
そう言うと、亜実さんは手元の薬袋を何気なく手にした。