極上の他人


「そう。再婚相手……今ここにいる真奈香ちゃんのお父さんが経営する会社の業績が落ち込んで、借金を作ったんだ。その返済のためにおじいさんとおばあさんが大切にしていた家を売りたいと、誠吾先輩に泣きついたんだ」

「嘘だ……そんなこと、聞いてない」

「ああ。当時そのことで悩んでいた誠吾先輩に俺のいとこの弁護士を紹介したから俺もそのことを知ってるけど、史郁ちゃんが悲しまないようにって、誠吾先輩は黙っていたんだ。
史郁があの家や、庭の桜の木を愛していることを知っていたから」

「桜……」

じいちゃんとばあちゃんが結婚した時に植えたという桜の木。

小さな頃、毎年春になると綺麗に咲き誇り、私にその花びらの吹雪を舞い散らせ幸せな気持ちにしてくれた大切な木。

「もう、あの木もないんだよね」

ぽつりと呟いた私の声は、思った以上に震えていた。

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