極上の他人
「史郁のお母さんは、史郁だけでなく、おじいさんやおばあさん、そして誠吾先輩が大切にしていた思い出さえも捨てて自分の幸せだけを追い求めたんだ」
まるで憎んでいるかのように低い声でそう呟いた輝さんは、ぐっと目を細めると。
「あんたは史郁の耳に傷跡を残しただけじゃない。みんなが大切にしていた思い出や幸せも、粉々に壊したんだ」
静かな住宅地に響く輝さんの声に、お母さんは眉を寄せると。
「あなたには関係のないことでしょ?その子をここに連れて来てくれたのならもう用はないから帰ってよ」
顎を突き出し、不機嫌な感情を隠すことなくそう言い放った。
その声もまた辺りに響き、広い敷地の向こう側に建物があるとは言ってもきっとうるさいに違いない。
何故かそれに気付いた私は意外に冷静なのか、輝さんの背中を軽く叩きながら小さく呟いた。
「これ以上、うるさくしない方がいいと思うんだけど……」
私の声に、真奈香ちゃんも反応し、側にいたお父さんとお母さんに慌てて声をかけた。