極上の他人
大人歴が私よりも格段に長い輝さんには瞳に浮かぶ感情を隠す術が備わっていて、その瞳を見ただけでは何を考えているのか正確に読みとることはできない。
だから、輝さんに見つめられるといつも同じ感情に包まれてしまう。
その感情は、私の願望と言うべきやっかいなもので、感じる度に振り払おうとするけれど、熱望する私の本心がそれを完了させてくれないのだ。
「輝さん、そんなに見つめないで。……見当違いの痛い女になっちゃいそう」
「は?なんだよそれ」
「輝さんの思いを自分に都合がいいように、願望でまとめ上げて嬉しがってしまいそう」
「……俺は、史郁が嬉しがるなら何でもするぞ?」
「ほら、またそんな優しい目で私を見るから、私……」
私を見る度嬉しげに眼を細めて、黒い瞳の揺れは私を愛していると呟いているようで、そして瞬きするごとに私を愛していると言っているように見えて。
輝さんの全身全霊で愛されていると、そして、私以外に大切な物なんてないと伝えているように勘違いしてしまいそうになる。