極上の他人



「だ、だめ……これ以上、勘違いしたくない。輝さんが私一人を求めていて、人生全てをかけて私を守ってくれて、そしてそして、半端なく私を愛してくれるって調子に乗っちゃだめなのに」

自分の願望に照れて、何度も首を横に振った。

確かに輝さんは私を本当に大切にしてくれるし愛してくれる。

結婚しているから当然だけど、私以外に女性と親しく付き合うこともない。

出会ってからしばらくは輝さんが経営しているバー『マカロン』にも顔を出して女性から熱い視線を受けていたけれど、今ではそれもない。

整いすぎている見た目で、人当たりもいいとなれば女性からのお誘いも多い(と勝手に嫉妬していた)。

仕事だとはいえ、自分以外の女性と軽妙な語り口で駆け引きまがいの会話を楽しむ様子を見るのも、想像するのも悲しかった。

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