極上の他人


「え?」

「まだ、震えてる」

「あ……」

私を見つめる愛しげな瞳を見ていると、自分に都合がいいように考えそうになる。

私を大切に思ってくれていると、勘違いしてしまいそうになる。

けれど、輝さんが私をこうして気遣ってくれるのは単なる責任感からくるもので、きっと目の前にいるのが私でなくてもこうしてその胸に引き入れて包み込んでくれるはずだ。

調子に乗ってはいけない、いけない。

自分を戒めるように俯き、気持ちを落ち着ける。

そして、ぐっと引き締めた唇にそんな感情を乗せて、閉じた瞼にも力を込めた。

輝さんに気持ちを持っていかれないように。

そっと輝さんに視線を向けると、私の気持ちを探るような瞳で私を見つめていた。

そして、何かを決意したように息を吐き出した。

「史郁の母親、史郁を捨てた後どうしてるか知ってるか?」

輝さんは、私を捨てた、とはっきり言って私を抱きしめた。

その言葉が持つ残酷さを補うように、私を優しく包み込んで、離そうとしない。

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