歩き出せ私たち
襟元から手を離すと、トモヤは、少しだけ浮かせていた腰を、力なく座席に沈めた。
私は、何でもないような無表情で顔を反らし、椅子に座り直す。
しん、とした、無駄に広い劇場。
ポップコーンをひとつ、静かに口に運ぶ。
「食べる?」
容器を、トモヤに向けて傾ける。
トモヤの指が、ポップコーンをみっつよっつ掴んで、また離れた。
「ねぇ、」
「うん。」
「どうだった?」
「びっくりした。」
「うん。知ってる。」
「でも、嫌じゃなかった。」
それも、知ってる。
でも、トモヤの口から聞けて、ちょっと安心した。
敢えてそれを伝える気はない。
ポップコーンが残った口で、そっか、と言って、からからと笑う。
「そっか、良かった。」