金色・銀色王子さま



「…………」






ちょっと前までは隣人で、
そりゃあもうただ意地悪で冷たくて
こんなに最低なヤツが
この世にいるもんなんだ、と思ってた


なのに、不思議


今は……こんなにドキドキしている



いつの日か夢で見た王子さまが片桐だったとしても、今だったら
疑わないかもしれない











「………ん?」


「………………」


「…ぃちゃん?ーーー麻衣ちゃんっっ?!」


「あっ!は、はい?なんですか店長」

「なんですか?じゃないでしょ!大丈夫なの?その手とか、膝とか!」


店長はシラッと出勤してコートを脱ぐ麻衣の体を見回しながらもう驚き慌てふためいている。
スカートの下から、大きな絆創膏と包帯が見えていたことは痛みが薄くなったからとはいえ配慮が足りなかった。
なんせ店長はとても心配性なのだ。


「大丈夫です、マンションの前ですべって転んだだけなんで」

「そんな訳ないでしょもう!手なんかなにこれ!痛そう~切れてるしぃ。もう絶対薬剤沁みるじゃない!後で話聞くからね!今日は手袋してやるのよ、はい!」


医療用の手袋をサッと渡されて麻衣は苦笑いで受け取った。










『仕事抜け出して、迎えにいくよ』

『大丈夫だよ。明るい道歩いて帰るから』

『あんたの話は信用ならない。戸締まりだってちゃんとしてないんだから』

『うっ…あれはうっかりミスっ。でもほんと、大丈夫だから。終わって、スーパー寄って、おうちに着くときにちゃんとメールします。』



家を出るとき、片桐と約束した
頑なに迎えを拒否した私に不服そうだったけど



それだけで…守られてる安心感に自然と頬が緩んでた



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