金色・銀色王子さま
ドアにつけた小さな鈴が鳴った。
お客様が着たんだとお店に出ると、そこには香織がいた。
「香織!」
「久しぶり~…に、なっちゃった的な?」
香織は相変わらず綺麗なファッション。
白いフワフワのニットにタイトなスカートが色っぽい。ただ一つ、変わったことがあった。
「香織…なんかお化粧変えた?」
「あー…うん。つけま辞めてマスカラにしたの。アイシャドウもピンク系にしてみたっ。どう?」
「いいじゃん!ナチュラルで可愛いよ」
「麻衣はもっと化粧したほーがいいわよっ。クリスマス近いし、いい男捕まえらんないよ?」
香織はそう言いながら席に座った。
この流れ的に、彼氏が出来たことを言うには絶好のタイミングだ。
麻衣はエプロンと手袋を付けると、向かいの席に座った。
「香織、あのさ…」
そう言って香織の手を自分の方へ引いたら、その続きの言葉を忘れてしまった。
「香織…爪、」
「あ、あ~あこれ!久しぶりだし放置してたら折れるわ取れるわで大変だったの。会社の人事異動とかで中々忙しくてさぁ」
短くカットされた爪は長さがバラバラな上“取れた”ではなく“取った”ような二枚爪になっていた。
ショートネイルはイヤだと言っていたし、いくら忙しくても再三、“むしったりカットしたりは自分でしないでね私がやるから”と言い聞かせていたのに。
「伸びてきたから気になっちゃったんでしょ?」
「そう、正解!さすがプロの目はごまかせないわぁ」
「…てゆうか、なんかあったんでしょ?」
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