金色・銀色王子さま

ドアにつけた小さな鈴が鳴った。
お客様が着たんだとお店に出ると、そこには香織がいた。


「香織!」

「久しぶり~…に、なっちゃった的な?」

香織は相変わらず綺麗なファッション。
白いフワフワのニットにタイトなスカートが色っぽい。ただ一つ、変わったことがあった。


「香織…なんかお化粧変えた?」

「あー…うん。つけま辞めてマスカラにしたの。アイシャドウもピンク系にしてみたっ。どう?」

「いいじゃん!ナチュラルで可愛いよ」

「麻衣はもっと化粧したほーがいいわよっ。クリスマス近いし、いい男捕まえらんないよ?」



香織はそう言いながら席に座った。
この流れ的に、彼氏が出来たことを言うには絶好のタイミングだ。
麻衣はエプロンと手袋を付けると、向かいの席に座った。



「香織、あのさ…」

そう言って香織の手を自分の方へ引いたら、その続きの言葉を忘れてしまった。





「香織…爪、」


「あ、あ~あこれ!久しぶりだし放置してたら折れるわ取れるわで大変だったの。会社の人事異動とかで中々忙しくてさぁ」


短くカットされた爪は長さがバラバラな上“取れた”ではなく“取った”ような二枚爪になっていた。
ショートネイルはイヤだと言っていたし、いくら忙しくても再三、“むしったりカットしたりは自分でしないでね私がやるから”と言い聞かせていたのに。


「伸びてきたから気になっちゃったんでしょ?」

「そう、正解!さすがプロの目はごまかせないわぁ」

「…てゆうか、なんかあったんでしょ?」


.
< 129 / 143 >

この作品をシェア

pagetop