善人ヲ装ウ、正直ナ悪党。
大貴を見上げて笑い返していると
-----プルルル。
遥の席の内線が鳴った。
言っちゃ悪いが、遥はシゴトが出来る方ではない。
だから、遥に用事がある社員はほぼいない。 と言うわけで、あまり内線が鳴らない。
大貴に視線を送ると『そうだろうね』と小声で答えた。
内線は、おそらく課長だ。
電話を切ると、遥もデスクを離れた。
おかげさまでワタシは今、シゴトがない。
『ちょっと追跡してくるわ』と遥を追いかける。
大貴は『カッコイイ言い方すんなよ、ただの尾行じゃねぇか』と笑うと『追跡結果報告ヨロシク』とデスクに戻って行った。
シゴトが出来て、温厚で喋り易い大貴は、受け持っているシゴトが多く、他の社員からも頼られている。
ワタシと一緒に追跡などしている時間がない。
正直、羨ましい。 ワタシもシゴトがしたい。 でも、今のワタシは追跡以外にやる事がない。