愛し*愛しの旦那サマ。

「どっちがいい?」

「は、はい?」

「幸代、と、サチ、どっちで呼んだ方がいいの?」


かなりの至近距離で、そう聞いてくる臣くん。


「さ、幸代……で」


そう私が答えると、


「じゃあ、幸代」


もう一度、何時ものように私の名前を呼ぶ。


「な、なんでございましょう……」


ドッキンドッキンと、鼓動が振動を繰り返す。

そんな状況で、


「幸代の作る美味しい夕飯も食べたことだし、幸代にしようかな」


くいっと、冷たい指先で、私の顎を持ち上げる。


「え、え……?」

「幸代、言ってたじゃん。買い物中に夕食決める時」


そう臣くんに言われて、ショッピングモールでの出来事を思い返してみる。


た、確かに、いつものノリで“晩御飯は幸代にする?”的な、ものすっごくベタなことを言ったけれども―…


そんな事を思っていると、


「ん―…」


臣くんの冷たい唇が私の唇に触れる。


何時もは軽くあしらうのに、ズルイよ、臣くん。


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