愛し*愛しの旦那サマ。
「はぁ~、もうそんな時間かぁ~」
で、幸代ちゃん、そろそろ臣のもとへ帰る心の準備は出来たましたかぁ~?
塚本のそんな問いかけに、
「……」
さすがに、そろそろ覚悟を決めて臣くんのところに帰らないと……と、思う。
臣くん……
怒ってるかな。
呆れてるかな。
心配……
してくれてなかったら、ちょっと、いや、かなり落ち込むけど……
いやいや!
この際、そんな贅沢は言ってられない。
気持ちをコントロール出来ないで、ろくに臣くんの話も聞こうとせずに、逃げちゃった私に非があるんだし……
「塚本……勇気を出して家に帰るよ……」
「うんうん。それがいいさ~まぁ、仮に臣と秘書がイケナイお仕事しちゃってもさぁ~臣の本命は幸代ちゃんなんだし~」
「アホ塚本ヘンタイ塚本……」
「あはは~嘘嘘~冗談だよ~」
「大体、アンタが変な事言って脅したことも、今回の件の原因でもあるんだからねっ」
「いや~。俺としては、万が一のそういう事態に備えて幸代ちゃんに心の準備をさせておいたほうがいいだろうという親切心で~」
「余計なお世話ですぅ!またアンタがそんなこと言うから、ちょっと不安になってきちゃったじゃないっ」
やっぱり、アンタは私の敵だっ!
改めてそう思って、バーカウンターに顔を伏せた瞬間、
カランカラン―…
と、出入り口ドアにつけてあるベルが鳴る音が聞こえた。