愛し*愛しの旦那サマ。
五時間前と変わらない、スーツ姿のままの臣くんに、
「お、臣くん……な、なんで……」
ここにいるの?
そう、私が聞こうとすると、
「私が教えたの」
と、理沙子。
「理沙子ぉ……」
きっと、私が自分から帰りづらい状況っていうことを察してくれたのね……
そんな感じで、理沙子の気配りに感激していると、
「でも、最初に臣くんが私に連絡してきたのよ」
と、理沙子が話を続ける。
「アンタ、私と話した後、携帯の充電切れたんでしょ?アンタと電話切って、ちょっとしたら櫻井家の家の電話から着信が入って、出てみたら臣くんで……さっきまで幸代と話してたこと伝えたのよ」
ああ、そうか。
固定電話の電話帳に理沙子の番号入れてたから……
やっぱり、臣くんはあんな状況でも冷静だわ。
それに比べて、ホント、数時間前の私ときたら……
理沙子の話を聞きながら、またも自己嫌悪に陥る私。
「で、臣くんから幸代が落ち着いた頃に迎えに行くから、それまで頼むって言われてね。店も閉まる時間だし、まぁ、ちょうど良い時間かと思って……」
さっき幸代を迎えに来るように臣くんに連絡したの。
と、理沙子は一通りの流れを説明してくれると、コンビニの袋から栄養ドリンクを取り出し、蓋を開けて飲み始めた。