愛し*愛しの旦那サマ。
「酔ったの?」
「す、少しだけ……」
タクシーの車内で交わした会話はこれだけ。
それから数分後、タクシーは彼女のマンションの前に停車した。
タクシーを降りると直ぐに、
「あ、ありがとう……」
と、礼を言う彼女。
「何が?」
「何だか送っていただいたみたいで……」
「別に。帰る方向はほぼ同じだし」
マンションのエントランス前で向き合った状態での会話。
「大丈夫か?」
と、尋ねれば、
「ちょっと酔いがまわったというか……でも、記憶とかはばっちりあるし」
大丈夫だよ~
と、頬を紅く染めて笑う彼女。
そんな彼女を見て、自分の手が彼女の頬へと伸びかけた瞬間―…
「……」
かなり昔のアメリカ映画の主題曲が流れ出す。
その途端、持っていたバッグを慌てて探り始める彼女。
鳴り出したのは彼女の携帯電話で、
「ご、ごめんっ、ちょっと携帯出るねっ」
そう俺に断ると、
「お疲れ様です……」
と、携帯に出た彼女。
俺は伸ばしかけた手を止め、ぶらり、と垂らした。