愛し*愛しの旦那サマ。
そんな俺の言葉に、
「そうだよねぇ。私がハマってる料理なんてどうでもいいよねぇ……」
と、彼女。
自分が言葉足らずな事は分かってる。
“もういい。分かった”
その言葉は自分自身に言い聞かせるものでもあった。
「もう分かったから」
彼女の気持ちも、自分の中に芽生えていた彼女への気持ちも、十分に分かった。
「幸代、」
彼女の名前を呼ぶと、
「臣くん……?」
彼女は少し驚いた様な表情をして、
「今、名前で呼んでくれた?」
そう俺に確認してきた。
「呼んだけど」
「ちょっと驚いたかも……」
「何で?」
「だって、今まで名前で呼ばれた事なかったし……名前で呼ばれるのなんて彼女くらいなんじゃないかなって勝手に思ってたから……」
そう言うと、彼女は嬉しそうに笑った。
こんな些細な事にでも、彼女は素直に喜んでくれる。
彼女はそういう女性だ。