愛し*愛しの旦那サマ。
ゆっくりと彼女が俺の顔を見る。
「それって……」
「俺の部屋で夕食、作るとか言ってなかったっけ?」
「い、いいの?」
「自分で言ったくせに確認しすぎ。で、作ってくれるの?」
そんなやりとりの後、
「う、うん……」
ようやく頷いた彼女。
数分前まで、あんなに相変わらずのペースで迫ってきたくせに、
急にそんな、ぎこちない態度をとられると、正直、俺も困る。
路上で人目もはばからずに―…
彼女を抱き寄せてしまいそうな自分がいるからだ。
「荷物、持つよ」
「ありがと……」
一先ず、そんな気持ちを抑えて、
「じゃあ、行こうか」
「……っ」
彼女の手をとって歩き出す。
マンションに向かう間、彼女は珍しく黙っていて、大人しくて、時折、難しそうな顔をして―…
推測するに、彼女にとっては突然だったかもしれない展開を今頃、彼女なりに整理でもしているのだろう。
俺とは違って、彼女は本当にわかりやすい。
そして、そんな彼女の手をマンションに着くまで握り続ける。