愛し*愛しの旦那サマ。


「早く入れば?」

「えっ!?ああ、そうですね。お、おじゃまします……」


部屋に着いても、まだ彼女の様子はさっきまでと同様で―…

というか、更にぎこちない言動になっている気がする。

そんな彼女を見るのは新鮮で、可愛いとさえ思ってしまうのだけれども、


「言動が硬すぎ」

「や、やっぱり?」

「こっちも接しにくい」

「ご、ごめんなさい……」


色々と調子を崩されそうになる自分がいて、今は普段通りに接してほしいと思ってしまう。


それから早々と、


「で、では、キッチンお借りします」


キッチンに立つ彼女。

ここに住み始めて以来、身内以外の女が部屋に入るのは初めてで、勿論、キッチンに立たせるのも初めてだ。


もともと俺は他人を部屋に入れるのを好まないタイプだが、彼女の姿を見て、ふと、こういうのも悪くないと思った。


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