不謹慎ラブソング
最初に連絡が取れたのは、気心の知れた友人で、電話口からは明るい音楽が聞こえてきた。
 
『ごめん、今、DVD借りに来てて。レジが並んでて遅くなっちゃった。皆も一緒なんだけどさ。』
 
慌てたような声の後ろからは「誰ー?」「今何時ー?」などと能天気な声が聞こえて来ていた。疎外感を感じずにはいられなかった私だが、ここで怒ってしまっては皆が気分を害すかと思い、明るい声を作った。
 
「平気ー。待ち合わせの場所で待ってるから。早めに来てくれると嬉しいな。」
 
全然、平気ではなかった。
 
突然降り出した雨に、慌てて青空のプリントされた傘をさした。

冷たい雫が頬に当たり、一気に身体が冷えていく。

それと共に、私の心は妙に冷静になって行った。
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