不謹慎ラブソング
カラオケへと向かう途中、木下が言った。
 
「でも、樋口さん、すごく目立ってた。」
 
他の人たちも、その言葉にうんうん、と頷いた。

私は思わず眉をひそめて聞き返してしまった。

そんなに派手な服でもなかったし、今日はお化粧もうまくできたはずなのに。

不安になって、「どうして?」と恐る恐る聞いてみた。
 
答えは、聞きたくなかった。
 
日野さんが笑いながら答える。
 
「だって、駅構内で傘なんてさしてるんだもん。」
 
日野さんも木下も亀井も、誰一人として、傘など持っていなかった。

服も濡れてはいなかった。
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