たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~
なにしろ、亜紀はこの場で初めて惟に紹介されたのだ。だというのに、その相手が婚約者。こんなことが受け入れられるはずがない。

そう思う亜紀は、なんとかしてこの事態から逃げようと頭をフルに回転させている。だが、事情も何も分からない今の彼女が逃げ道をみつけられるはずもない。結局、彼女は思いっきり不満です、という表情を浮かべて、慎一を睨むことしかできない。



「亜紀、そんな顔をして、何か不満でもあるのかい?」


「不満っていうより、訳が分からない。どうして、初めて会った人なのに婚約者だって紹介されるわけ?」



今の亜紀は完全に腹を立ててしまっている。そのせいだろう。一條家にきてから叩きこまれたはずの礼儀作法など、完全にどこかへすっ飛んでしまっている。もっとも、そのことを慎一が気にする様子も見せないため、亜紀は安心したように思ったことを口に出していた。



「お父さん、前も思ったけど、なんでも勝手に決めちゃうのは止めて。私にだって感情があるんだもの。こんな大事なこと、勝手に決められて『はい、そうですか』って言えるほど、私は人間ができてないの」


「亜紀のその気持ちは分からないでもない。でも、これは決まったことだしね」


「だから、それが嫌だって言ってるの。どうして、なんでもかんでも勝手に決めてしまうのよ。高校入試の時だってそうだったわ。勝手に願書送ってきて、受験しないといけないようにしてきたのよね。挙句の果てには、手続きまで勝手にしちゃったんじゃない。私、本当は友だちと同じ上洛(ジョウラク)に行きたかったのに!」

< 15 / 244 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop