たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~
「そんなことはないよ。そういう風に考えれば、お互いに間違いなくメリットはあるんだから」



惟の言葉の意味が亜紀にはどうしても分からない。今の彼女は不思議そうな表情で「どうしてですか?」と問いかけるだけ。そんな彼女に、惟はニッコリと笑いながら話しかける。



「亜紀ちゃんが一緒にいてくれれば、僕としては本当に助かるから。そして、君もパートナーが決まっている方が変に騒がれなくてすむはずだよ」


「その意味が分からないんですけど」


「慎一さん、亜紀ちゃんに何も教えてなかったんですか? 一條っていう家の名前は半端ないんですし、その名前に群がる連中が山ほどいるってこと、知ってるんでしょう?」



この場では亜紀よりも慎一に話を振った方が早い。そう思った惟が慎一に向ける口調は、どこか咎めるようなもの。もっとも、向けられた方はそのことを気にもしていないようにあっさりと切り返す。



「惟君の言い分も分かるけどね。でも、亜紀にはあまりそういうことを意識して欲しくなかったし……まあ、教えてなかったといわれたら、反論できないんだけどね」


「慎一さんが亜紀ちゃんに甘いだろうとは思ってましたけど、予想以上に甘いんですね。本当なら、こういうことはちゃんと教えておくべきなのに。そうじゃありませんか?」


「そう言われると、わたしとしては何も言うことができないね。でも、そういうことも含めて、君が教えても問題ないと思うよ。なにしろ、君と亜紀は婚約しているわけだし」



どこか他人事のように紡がれる慎一の声に、ため息を一つついた惟が咎めるような視線を向けている。そんな彼の姿に、色気を感じてしまったのだろう。亜紀の顔が一気に赤くなっていく。

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