君の『好き』【完】
「ご、ごめん.....」
下を向いて謝ると、
吉井くんが一歩私に近づいた。
「なに?」
「えっ?」
顔を上げると、首を傾げている吉井くんが見えた。
「呼んだだろ?」
「あぁ……
えっと……その……
私、風間先輩を見にきたんじゃなくて……」
ちらっと上目で吉井くんの顔を見ると、吉井くんはさらに首を傾げていた。
「だから、その……」
「吉井!!何やってんだ!!」
もじもじしていたら、体育館の中から先輩と思われる人が、
吉井くんに怒鳴った。
「今行きます!」
吉井くんは下を向いて自分の髪をくしゃくしゃっとすると、
救急箱を下に置いた。
そして首のタオルを引っ張ると、
私の首に掛けた。
「えっ」
吉井くんはまた救急箱を持って、
何も言わずに体育館の方へと走り出した。
ちょっと......このタオルどうしたら........
おどおどしていたら、
吉井くんが体育館の入口の前で私の方に振り返った。
「預けたからな。最後までちゃんと持ってろよ」