君の『好き』【完】
最後までって.....えっ???
下を向いて首に掛けられた黒いタオルを見つめた。
さっき吉井くん、これで顔を拭いていたよね.......
そんなことを思い出してしまったら、
ドキドキしてきてしまった。
これって、
待っていていいってことだよね。
私、吉井くんを待っていていいんだよね。
そっと首からタオルを外すと、
軽くたたんで、胸の前でぎゅっとタオルを抱えた。
こんなことされたら、
もっと好きになっちゃうじゃん。
こんなことされたら、
勘違いしちゃうじゃん。
体育館の中に入っていく勇気がなくて、
座っていた階段まで戻って、
また一段目に腰掛けた。
膝の上に置いた吉井くんのタオル
吉井くんが貼ってくれた絆創膏
人を好きになるって、
こんなにドキドキするんだ。
好きな人の物
好きな人がくれた物
こんなにも特別な物に感じる......
しばらく体育館のボールの音や掛け声を聞きながら、
階段に一人座って吉井くんを待っていた。
吉井くん、バスケしているところ本当にかっこよかった。
タオルを見つめながら吉井くんを思い出していたら、
やっぱり、バスケしている吉井くんが見たいって思った。
でも勇気がない
でも……やっぱり見たい......!
ぎゅっとタオルを握り締めると、
えいっと立ち上がって、
体育館の方へと歩き出した。